〔アドラー心理学とは〕
アドラー心理学は、オーストリアの精神科医であるアルフレッド・アドラー (A.Adler)が創始し、その後継者たちが発展させた心理学の理論、思想と治療技法の体系です。
個人心理学(Individual Psychology)というのが正式名称ですが、個人心理学というと、個人を細かく分析したり個人のみに焦点を合わせるように誤解されやすいので、日本 では、この名称はあまり使われません。
理論的な特徴としては、
- 人間を分割できない全体として把握し、理性と感情・意識と無意識などの対立を認めないこと(全体論)
- 行動の原因でなく目的を理解しようとすること(目的論)
- 客観事実よりも、客観事実に対する個人の主観的認知のシステムを重視すること(認知論)
- 精神内界よりも個人とその相手役との対人関係を理解しようとすること(対人関係論)
などをあげることができます。
思想的な特徴としては、
- 他者を支配しないで生きる決心をすること
- 他者に関心を持って相手を援助しようとすること
アドラー心理学の特徴
アドラー心理学の特徴を、4つの要素から解説しましょう。
- 目的論
- ヨコの関係
- 課題の分離
- 勇気付け
①目的論
目的論とは、人間の行動にはすべて目的があり、自分が現在置かれている状況は自分の目的を達成するために自らが選択した道である、という考え方です。
対して、目的論と対比されることの多い原因論は、結果にはすべて原因があり、自分が現在置かれている状況は自らの過去によって決められるという考え方になっています。
②ヨコの関係
ヨコの関係とは、横並びに位置した人たちがお互いに、信頼関係を築く・尊敬し合うという関係が構築されていることで、タテの関係は、「上から下への支配」「下から上への依存の関係が構築されている」ことです。
支配や依存から生まれるタテの関係からは、他人から承認されたいという承認欲求が生まれます一方、ヨコの関係では、自分以外の人を対等な立場と見なすため、共同体感覚を生み出します。
③課題の分離
課題の分離とは、同質ではないが対等な関係にある他者が持っている課題と、自分の持っている課題を分離させること。
ヨコの関係が築ければ、他者に劣等感や忖度感情を持つ必要がなくなります。その上で、課題が自分の課題でないと判断できたら、「これは他者の課題だ」と考えを整理して、他者の課題に介入しすぎないようにするのです。
④勇気づけ
勇気づけとは、困難を克服するための内なる活力のこと。アドラー心理学が別名「勇気の心理学」と呼ばれている点からも分かる通り、勇気付けによって、自分の目的や行動が変わることで新しい自分を構築できるのです。
勇気づけは他者に対しても発信でき、他者が自分自身の力で生きていけるようサポートすも含めた言葉と解釈されています。対等な立場でお互いを尊重しながら新しい一歩を踏み出す勇気、これこそがアドラー心理学の神髄です。
アドラー心理学のメリット
アドラー心理学によって得られるメリットとはどのようなものでしょうか。5つのメリットについて解説します。
- 物事をシンプルに捉えられる
- 問題との向き合い方が分かる
- 「どう生きるか」が明確になる
- 自分のすべてを活用できる
- 自分を変えられる
①物事をシンプルに捉えられる
「今の自分の状況は、自分が選択してきた道だ」「自分の問題は誰への忖度もなく、自分で解決してよい」「自分で課題を解決すると、自分の未来を望むように変えられる」といったロジックにより、物事をシンプルに思考できます。
②問題との向き合い方が分かる
問題に直面した際、「どうしたらいいのか悩まなくなる」「自分の課題に対して行うのは、解決方法を決定するだけ」となります。周囲とのしがらみを考えず、自分の課題に自分で答えていくだけなので、問題との向き合い方が分かるようになるのです。
③「どう生きるか」が明確になる
アドラー心理学によって自分の課題や選択肢についてシンプルに考えられるようになります。その結果、「自分がどう生きるか」といった哲学的な人生観を明確にできるのです。
④自分のすべてを活用できる
アドラー心理学は、「自他共に尊重される」「自分の課題に自分で答えていく」ため、自分に自信を持って前に進めるようになります。自分が持つ知識やスキルも存分に引き出せるため、自分自身のすべてをフル活用できるようになるでしょう。
⑤自分を変えられる
「自分を変えて将来を変える」「自分を柔軟に変えていくと、将来も柔軟なものになる」これが分かれば、自分を変えることに抵抗感がなくなるでしょう。「自分を変える」という内発的な意識が芽生えれば、現実的に自分を変えていけるようになります。
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